新月の夜が来た。
この日までウブドに居た理由は、新月と満月の日だけやるというケチャがあるとのことで、それが観たかったからだ。インドネシアは見たいものが沢山あって、どこに行くか、何をするか、かなり迷ったが月に2回しかやらないケチャとはどんなものなのだろうと気になり、新月の日が来るまでウブドで滞在することにしていた。
この新月のケチャを観て、ウブドから去ることになる。この日の舞踊鑑賞で見納めだ。
新月というのは不思議な宇宙のエネルギーに満ちていて、何か新しいことを始める日に適しているらしい。一方満月は完了のエネルギーがあり何かを手放すことに適しているようだ。
女性の身体も生理という周期があるが、この周期が月の満ち欠けに大きく影響しているのは女性なら日常で感じていることだろう。蟹の産卵やウミガメの産卵もよく満月の日に行われる。狼男も満月の日にはオオカミに戻ってしまう(笑)
気づかぬうちに人間は月のエネルギーに大きく影響されているのだと思う。少し意識するととても面白くて、毎日夜空を仰ぐようになった。
昔の人がお月見をしながら月に感謝したように、たまには月をしげしげと眺め愛でる時間があっても良いだろう。
そしてこの日はカワイイお客さんが遊びに来てくれた。
なんだかテラスでガサガサ音がすると思って外を覗いてみると、猫がゴミ箱の中身をごそごそしていた。
私たちは今日ツナ缶を使ってマルチクッカーで料理をしていて、その空き缶を外のゴミ箱に捨てていたのだ。多分そのツナ缶の匂いに引き寄せられてきたのだろう。
ビニール袋に包んで捨てたが、そのビニール袋をびりびりと噛み破っている音だった。
猫と月は良く似合う。
静かで神秘的な夜が終わると、ウブドは毎日燦々と太陽が照り付けている。
この時泊まっていた宿は何種類か朝食の種類が選べて嬉しい。私は朝食はしっかり食べたい派だ。滞在中に全種類の朝食メニューを試してみたが、オーソドックスな卵トーストが一番だった。
ちなみにインドネシアではサンバルソースというものが必ずと言っていいほど付いてくる。甘辛いチリソースといったところか。ナシゴレンやミーゴレンなど、結構そのままでも塩辛いぐらいの味付けにも関わらず、地元の人も白人の観光客も大半の人がそれにプラスしてサンバルソースをじゃんじゃんかけて食す。初めはこんなに塩辛いものに更にかけたら身体が塩で侵されそうだなと思っていたが、人の身体は美味い具合に適応能力が優れているのでじゃんじゃんかけられるようになってしまう。
いや、でもこれに慣れたらいけない。明らかに塩分の摂り過ぎだ。
これはタマリロというフルーツらしい。どんなものか購入してみた。
中身はこんな感じで種が多め。味は、兎に角酸っぱい!!酸っぱいだけといっても良いぐらい。そんなに美味しいものではなかったが、ビタミンCは沢山摂れたと思う。
種を食べても良いのかわからないがそのままぼりぼり噛み砕いて食べた。
ただこのフルーツ、ヨーロッパで見かけた時は一つ2ユーロを超えていた。ここインドネシアではこの量で100円もしない。この値段の差が恐ろしい・・・。
そして夜。私たちはアルマ・オープンステージに向かった。
アルマ・オープンステージはアルマ美術館の中に位置していて、ハノマン通りを南下していき、cocoスーパーマーケットを通り過ぎ、カキアンバンガロー&ベーカリーも通り過ぎ更に南下していくと見つかる。
私たちはお昼ごろ予めチケットを購入しに赴いていて、スタッフの方が席をリザーブ出来るよと言ってくれたのでお願いしたところ、一番前の席を用意しておいてくれた。オープンステージは席から高くなっているので後ろでも見えづらい事はないだろうが、一番前がやっぱり良い。
看板には19時開演となっていたが、19時30分開演に変更されていた。一人10万ルピア。
席の下には蚊取線香が置かれているが、蚊が多いので虫除けをしておいた方が良いと思う。
ちなみにお昼にこの辺りでオーガニックマーケットが開催されているという情報があったのだが、アルマ美術館のスタッフさんに聞いたところ何カ月前からか開催がなくなったらしい。残念!
沢山の蝋燭でライトアップされたオープンステージはとても神秘的だ。時間になると松明を持った上半身裸の男たちがぞろぞろと出てきた。
独特のチャ、チャ、チャ、チャという声を響かせながら。中央に集まりみんなで揺れ動きながら、チャ、チャという発音だけで会話しているように感じる。
同じ音に思えてニュアンスは違って、きっとチャの中にいろんな意味があるのだ。言葉なんて彼らにはいらないのだろう。
暗号のような音のパレードが会場を埋め尽くし、この瞬間から舞台に引き寄せられてしまう。
チャの旋律と共に心臓がどくどくと高鳴った。
このグループは子供たちも多くいる。松明から流れる油がしたたっていて相当熱そう。
こうやって伝統が受け継がれていくんだなと思う。
スアラ・プルナマは伝統舞踊とコンテンポラリーが融合されているらしい。インドネシア有数の踊り手のリノ氏が結成したグループみたいで、この中央の人がリノ氏だ。
この写真ぶれてしまっているが、舞台上の雰囲気はこんな感じ!こんな風に現実とはかけ離れてぶれてしまう情景が繰り広げられるのだ。
時折このリノ氏がチャの中に、グア!とか言いながら叫び出す。
それがスパイスになって場を更に活気づけている。
というか、この人凄い。凄いというか、超面白い!彼がグア!っと叫ぶたびに良い意味で鳥肌が全身にたった。
身体も精神も全開だ!
羨ましいほど自由に開放して楽しんでいるように見える。動物的感性の塊。
そして炎のボール蹴りが繰り広げられる。
ケチャと炎は切れない関係なのだろう。
この炎のボール、観客の方まで転がって来たりする。熱くて凄い迫力だ。
リノ氏暴れまくり!
このパフォーマンスには(太古の世界に迷いこんだ気になるので、パフォーマンスという言葉でこのグループを表現するのは違う気がするが)話の道筋があって、ヒンドゥーの叙事詩ラーマヤナの一部、猿の王スグリワとその兄スバリの戦いを題材にしているらしい。
終始チャ、チャ、チャ!と物語が展開していく。
このグループの展開する「チャ」という音の旋律は人の深層部まで浸透する音のような気がする。電子レベルで細胞が一緒に振動を始めて活性化していくのだ。
生と死が隣り合っている場面というのは、とても神聖なものがある。大勢の人が客観的に周りを取り囲んでいる様は、まるで大自然のようにも見える。
炎の明かりが柱のように伸びて、生と死を色濃く映し出す。
途中、観客の一人が舞台に上げられた。
観客を巻き込むのはこういったパフォーマンスにはよくあることだが、この場面、原始時代に迷いこんでしまったおじさんにしか見えない!
物語が終わり、松明を持った人々は部隊から消えていった。
色濃い雰囲気を燃え尽くすように最後に残ったのは、炎。
静けさが戻ってくる。
新月まで待って良かった!
そう強く思えたパフォーマンスだった。
さあ!移動の時がきたぞ!
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