この記事は、2017年7月29日の出来事です。
バンフォラまで来ると、ブルキナファソではだいぶ西側に来ており、隣国コートジボワールが近くまで迫ってきています。
コートジボワールが近いとはいえ、我々が目指すのは首都のアビジャン。アビジャンは南の大西洋に面しているため国境超えてからが長くなります。
また、地図上では約10時間の距離ですが、陸路で国境を超えることで、特に西アフリカにおいては移動時間が全く読めなくなります。
まずブルキナファソからコートジボワールに陸路越境するために絶対に必要なものをさらっと3つ挙げますと、
1、当たり前ですがパスポートとコートジボワールビザが必要です。
コートジボワールビザはセネガルのダカールに滞在していた時に確保していて既にパスポートに貼り付けてあったので問題なく行けるはず。
2、それと国境前後の移動を請け負う乗り物の確保ですが、これはバンフォラからのバスで一気にアビジャンまで行ってくれます。
3、そして、髄膜炎の予防接種を受けたことを証明するイエローカード(黄熱病もイエローカードなので注意です。別物です。)が必要となります。
実は、この髄膜炎の予防接種は受けていませんでした。ベナンのコトヌーで接種することも出来たのですが、いかんせん値段が高い!56,000セーファですよ。11,000円。ローカル屋台なら100円で食事ができるこの世界で、食事110回分のワクチンなど受けるはずがあろうか?いやない!
髄膜炎ワクチンは国境で受けられるという情報だったので、その情報が生きていることを願いながら国境に向かうのでした。(情報が流動的なのも西アフリカあるあるですね)武器も持たずに戦場に向かう気分ですが。
ちなみに西アフリカのあの辺は(エチオピア西部からサハラ砂漠に沿って大西洋に抜けるまでのエリア)髄膜炎ベルトと呼ばれる、髄膜炎の流行地域なのです。当然今まで滞在していたベナンやトーゴ、ブルキナファソもそのベルト内に入っていました。にもかかわらずワクチン受けてないのもアレなんですが、ま結果オーライということで。
というか髄膜炎ベルトもそうだけど、その辺一帯って、エボラ出血熱がつい最近まで流行していたり、当時はアフリカ系イスラム国武装組織のボコ・ハラムなんかが(やや下火になってはいたものの)相変わらず活動していたりと、そもそも髄膜炎も脳に到達すれば死ぬ病気ですし、いろんな原因で死ねる地域です、よく考えたら。特にボコ・ハラムに出くわしたら100%アウトです。
生きるも死ぬもほんの些細な巡り合わせ、生きててラッキー!ですね。
といいつつ、今記事には書きませんが、やっべぇ死ぬかもという体験を早速したので次の次辺りに書きます(笑)
で、国境で時間が読めない最大の理由というのが、渡航条件が揃ってさえいれば確実に越境できるというワケではない、というところにあるのです。
当然、どこの国でもパスポートにスタンプ押してもらうのに列に並ぶとか、荷物のチェックにまた並ぶとか、旅行者は国境職員に色々訊かれるとかあるのですが、問題なのはスタンプを捺す人間がちゃんとしてない可能性があるという点。
西アフリカの国境越えでよくあるのが賄賂の要求。これ手続き的な意味は全くありませんから。ビザ代だけで6,600円ほどかかっているのに、単に職員の懐に入れるためだけに更に払うなんて絶対嫌です。かと言って変にケンカ腰で対応するとスタンプ捺してもらえないということも起こりえます。そんな不条理を可能とする権限が信じられないかもしれませんが国境職員に帰属しているのです。陸路越境の心得は西アフリカビザに関する情報まとめという記事に口酸っぱく書いてあります。
準備と不安要素の確認という前置きはそのくらいにして、いざバンフォラからアビジャンへ、移動開始!
国境が開く時間というのもあって朝7時発くらいのバスが最も効率的な出発時間だったのですが、到着時間を想像するとかなり不安な時刻の出発。
座席指定の番号はありますがみんな守ってない感じだったので、我々も適当な席につきました。
ここでいう適当は、テキトーなのではなく、適切なという意味の「適当」です。テキトーに選ぶと座面が濡れていたり、先客の食べかすが残っていたり、生ごみが落ちていたり、リクライニングが死んでいたりします。それ気にしないバス会社や旅客って凄くないすか?僕たちそんなに繊細か?
前方にモニターがあるのでまたジャン・クロード・ヴァンダム系の映画が観られるのですが、さすがに14インチのブラウン管モニターはこの位置からでは見えない。
今回の移動はホンダさんも一緒だったので、めちゃくちゃ心強い!
バスは走り出すとすぐさまこのような景色になり、目的地まで延々とこんな感じが続きます。
国境での手続きは心配していたのとは裏腹に、荷物チェックもあっさり(バスが国境に着く前にチェックは終わった)スタンプも余計なことされずにあっさり捺してもらえました。そして髄膜炎ワクチンは2,500セーファ(500円)であっちで受けてねーと案内までされ、おぉ、これは先の心配は杞憂だったかなと、やや気が緩んだのもつかの間、
案内されたその場所はただ段ボールが積んであるスペース。屋内ですらないそこに、形だけ白衣を着たマッドサイエンティスト(という印象)が一人、仁王立ちして待ち構えていました。
「2,500だ。」と言われてお金を払うと、段ボールから出した注射器を素早く包装から取り出し左手で僕の袖を捲り、注射器を握った右手を大きく振りかぶり、空手の鉄槌よろしく僕の左上腕にぶっ刺しました。ちょ待っ・・・・・
・・てぇおおいっ!
清潔な空間で先ずお金を受け取った手を洗い、ターゲットを消毒して注射針を上に向けてトントンして空気が入ってないことを確認してから薬液をちょっと出して「はい、チクっとしますからね~」って優しく言ったのち浅い角度でターゲットに注射して、血が吹き出さないように、中で針が折れないように押さえながら慎重に注射針を抜いて最後に滅菌ガーゼを当てて絆創膏貼るっていう工程が抜けてるぞ!
お前やったの「ビリッ」「ドスッ」「ズボッ」だけだろ!
マッドサイエンティストでももうちょっとちゃんと注射するんじゃないかな・・
それを目の前で見ていた万琵は(注射が大のニガテ)これ以上ないくらい狼狽し、終わった後には半べそをかいてました。あれは普通に怖いと思うゎ。僕から見れば涙流してないだけ強くなったと実感(笑)
・・・まぁ、ちゃんと血管にワクチンが入ったのかどうかは別として(もしかしたら筋肉注射だったのかもしれないし)無事に手続き終わったからバスに戻ってあとはダラダラするだけだなぁと思って駐車場に向かうと、乗っていたバスが我々を置いてブーンと走り去って行くのをちょうど見かけました。
ちょまっ・・・・・!
今度は僕がうろたえる番か。走って追いつける距離にバスはもういないし、なにせ我々の荷物が積まれてるし、届くはずもないのに大きな声で「ヘーイ」「ヘーイ」とバスを呼ぶ・・情けなし。
見かねたバイクのおっさんが「あのバスか?よし乗れ!」と言ってはくれたものの、そのバイクで一体どこまで行かされるのか、セネガルで財布をすられてからというもの現金持たされておらず(一応米ドルは隠してある)お礼のしようもないし万琵とバイクの間をうろうろしてるだけの情けない僕の前に颯爽と現れたのがホンダさんでした。
文章中にバイクとホンダが同時に現れるとややこしくなりますが。。
「どうしたんですか?」いや僕らのバスが先行っちゃって、荷物積んであったからそれも持ってかれちゃってという話をすると、
「ありゃ~じゃあ次の同じバス会社のバスに乗りましょう、それで行っちゃったバスに連絡してもらって、どこかで待機して貰うように言いましょう。」
なるほど!流石ホンダさん、この状況を乗り越える術をすでに持っていた!なんて頼りになる人だ!
そしてその通り、間もなく次の便がやってきてドライバーにかくかくしかじか、無事に当初のバスに追いつくことが出来たのでした。
そしてそこでホンダさんのアフリカ処世術をまた一つ見ることが出来ました。
「ここではね、前のバスのドライバーをきつく怒るんですよ。アフリカ人というのは自分のしでかしたミスがどれだけ重大なのかを解っていないんです。だからここで大げさに怒って教えてあげないと、また同じことを繰り返す奴らなんですよ。ていうか絶対何度かやってるうちの一回ですよ今回のも」
「で、僕(ホンダさん)これから大げさに怒るけど、心から怒ってるワケじゃないから心配しないでね。」
凄すぎるよホンダさん。
そして有言実行、ドライバーの肩をどつき胸ぐらを掴んでおもっきし怒ってました。半分日本語で。
一応その後僕も直接の被害者であるということで怒ってみたんですが、後から万琵に怒り方がなってないとダメだしされました。元俳優としてはそれ単純に恥ずかしい(笑)
そういえば、事前の心配が杞憂だったとかさっき言ってたような気がするけど遠い過去のことのように思える・・・予想を別角度から超えてきたな。まぁそれも今は過去のことだ、笑い話になるんですよ。
途中に寄った休憩所。気分的には食事要らないから一刻も早く到着したかった。
と色々あって、案の定予定を大幅に遅れたバスは、深夜1時を回ってようやくアビジャンのバスターミナルに到着したのでした。
なんだかバスの墓場みたいな、およそ機能しようのない状態の車が何台も打ち捨てられている駐車場を抜けてバスターミナルに入るので、あれ、このバスこのまま廃車になるのかななどと思ってしまいましたが。
ホンダさんが安宿の当てはある、ということで、タクシードライバーにトレッシュビル地区の宿があるところまで運んでもらい、そこで宿を取りました。
これは昼間に撮った写真ですが、トレッシュビル地区はアビジャン南部にあって川の中州というか埋め立て地になっているのか、そんな環境の場所で、江戸で言うところの川向うというか、下町というか、本土と比べると経済的に恵まれていない人々が多いエリアになります。だから安宿もあります。
案内された部屋は照明器具が無く(笑)真っ暗で明かりがつかず、部屋はめちゃくちゃ狭いうえにベッドがものすんごく沈む、ガンビアで已む無くとった刑務所風のあの宿(程ではないにしろ)を彷彿とさせる状況でした。深夜だからもう選べないけど、明日以降なんとかしないとな。下のは翌朝撮った写真です。
3泊分払って領収書を受け取ると、ホテルの名は「ホテル・サクセス」
大失敗してんじゃん!
更新情報はツイッターでも。bambi_handstand
ブログより1年早い?インスタグラムはこちら。zekkeibutoh
この時滞在していた宿はコチラ⇒ホテルサクセス