私は不可解なことを見たり、やったりすることが好きだ。
舞踏も大半の人には意味が解らないと思う。
私も初めて北辰の會の稽古で舞踏を見た時、この人たちはどうしてこんな不可解なことをしているのだろう・・・と呆然としたものだ。でも人間が変容していくような神秘や、理解できないアートのような空間が生まれる瞬間や、愛溢れる空気が流れたり、懐かしさを感じたり、・・・自分がやっているときは全くわからないが、メンバーの踊りを見ているといろんな世界が広がりとても面白い。
それに場全体が一種のヒーリング的要素に満たされたようで、なぜかもの凄く心が落ち着く。
マスクフェスティバル第一日目も不可解なことのオンパレードだった。
幼稚園のお遊戯みたいな部族もいたけれど(いや大半はそうか?!)、愛嬌たっぷりでつっこみ所満載で、緩いのに強いエネルギーに満ち溢れ、かなり面白かった!
そして今日の夜はバイニン族のファイアーダンスがある。これはココポビーチバンガローがツアーを組んでいるので、昨日私たちも予約しておいた。料金はひとり一万円ぐらいしたが、ここまで来て行かないわけにいかない。
一日目のプログラムが終わって、市長が今日の夜に開催される予定のファイアーダンスについて話し始めた。
私はあまり聞いていなくて理解できていなかったが会場がざわつき始めた。隣に居たスリランカから来た人が、今日のバイニン族のファイアーダンス中止だって、と教えてくれた。
中止だと?!
バイニン族というのはココポから車で一時間程の山の中に住んでいる部族だ。昔トーライ族に山に追いやられたらしい。
そのバイニン族にも独特のマスクがあって、大きな仮面をつけて火の中を駆け回るというものだ。
マスクフェスティバルのもうひとつの大きなイベントになっている。
中止?と会場がどよめいている。
観光客はみんなマスクフェスティバルとファイアーダンスはセットで楽しみにしているわけだ。
私にとってもそれは一緒で、何かの間違いなのではないかと自分の耳を疑った。
運営側もざわざわしていて、話は右往左往しているようで、あまりはっきり分かっていないようだ。
何十分かたった後もう一度アナウンスがあって、改めて明確になるまで待ってということになった。
それでも中止の色が濃いみたいだった。
ここまで来たのに、ファイアーダンスがみられないなんてありえない!!
と思いながら、とぼとぼとホテルに帰った。
ホテルの受付の人に改めて聞いたがまだわからないので、決定したら部屋に電話を入れてくれる事になった。
一度部屋に戻り、当初の予定のピックアップ時間になるまで待つことにした。
ピックアップ時間になっても電話はかかってこなかったので、もう一度受け付けの人に確認すると、やっぱり今日は中止に決まったみたいだ。
・・・悲しすぎる。
同じように聞きに来た白人のカップルは諦めてビール片手に外に出ていってしまった。
でもここはファジーな国パプアニューギニア。何が起こるかわからない。
中止なんてなにかの間違いだという気持ちが捨てきれなかったが、渋々部屋に戻ってむしゃくしゃしながら、タイで買い置きしておいたシリアルバーをお腹も空いていなかったがやけ食いした。
ちっとも美味しくないし。
それでも、やるって電話が来るかもしれないと心のどこかで期待していた。
ムラケンはお腹が空いていたのでむしゃむしゃ食べた。
30分ぐらいたっただろうか、いきなり部屋の電話が鳴った。
心臓がぴょんと飛び跳ねた。
これはもしや!!
良い予感も当たるものだ。
やっぱり行われることになったので、急いでロビーまで降りてきて!との事だった。受付の人も急いでいるようだ。
気分は一気に上がって、やった!と私たちも急いでロビーまで降りていった。
受付の人は急いで車を出して、ピックアップバスがホテルまで来てくれるはずだったが時間が押しているのでバスが今いるココポビーチリゾートバンガローまで連れていってくれた。
ココポビーチリゾートバンガローに着くと、今か今かと待ちかまえていたであろう観光客が集まって嬉しそうにしていた。
今回中止になりそうになった理由は、日本人のツアーの団体20人程がこちらに到着できなかったためとのことだった。エアニューギ二には週に何度か日本とパプアニューギニアの直行便がある。そのエアニューギニがストライキを起こし成田発の便が欠航になってしまったとのことだった。20人もの数のキャンセルにより、催行するだけのお金が入ってこなかったからのようだ。というか日本人が20人も来る予定だったのか!
前の記事にも書いたように実はパプアニューギニアと日本の関係は深い。
個人旅行者でくる人は少ないにせよ、遺族や関係者が戦没者供養をするためにツアーが催行されていたりするみたいだ。
もう少し日本人がいても良いのにと思っていたのだ。日本人は私たち以外にバングラデシュのダッカで働いているというカップルだけだった。
私たちもカップルもマニラ経由の便だったので、この地に降りることができたと言うわけだ。飛ばないエアニューギニはここでも飛んでいなかったか・・・入れたことだけでも奇跡でしたね、とカップルと言い合った。
ちなみに余談だが、少し前にダッカではテロ事件が起きていて、日本で大きなニュースになっていたはず。ダッカから来たカップルに、大丈夫なんですか?と聞いたら、全然大丈夫ですよ~とあっけらかんと答えていた。こういった外部と内部のイメージが違うことはよくある。
私たちは今回の旅でバングラデシュに入る予定はないが、いつか行けたらいいなと思う。
真っ暗なボコボコな道を進んでいく。ラバウルの道路は時折大きな穴が開いていたり、なかなか危険だ。
一時間後、村に到着。
すでに到着していた観光客も居たみたいだが、ファイアーダンスの準備がまだで火がくべられている真っ最中だった。
次々に薪が運び込まれ、火をどんどん大きくしていく。火というものはなんとも場を神秘的にしてくれるものだ。ワクワクした。
会場に煙が立ち込め、暑い。ココポビーチリゾートのスタッフが椅子を用意してくれ水をくれた。
音楽がなりだした。歌声も聞こえる。
出てきた!
奥の方から大きなマスクを被ったバイニン族が登場!バイニン族のマスクは本当に大きい。
重たそう!踊りと言う感じではないが音楽に合わせてリズミカルなステップを踏んでる。
この火の前で、あの大きなマスクで息をするのも大変そうなのに、本当にエネルギッシュによく動く。
ひとりひとり紹介するように出てきて後ろの方で整列。
まるで精霊?妖怪?が深い森の中でひそひそ密談しているみたいだ!なんて不思議な光景!
ここは日本昔話の世界だ!
マスクはひとつひとつ微妙に形やデザインが違う。
そしてファイアーダンスが始まった!ここからは写真でどうぞ!
火の回りをリズミカルに動き続けトランス状態になると、
次々と火の中に突進していく!薪を蹴散らすたびに火の粉が当たりにブワっと広がる。
凄い!
途中こんなものも出てきた!これはなんだ!?わからない!!
仮面をアップで見ると、物凄い破壊力だ!
仮面の前、横、後ろ!
お互いに戯れたりもする!
火を蹴散らしまくって、火が小さくなるとまた新たに薪をくべて火を起こす。
バイニン族のマスク集団は延々と火の中に果敢に入っては火を蹴散らしていく。
途中倒れてしまったマスク君もいて、すぐさま運ばれて行ったが、こんだけ動いて酸素薄かったら失神もするよな、と思うぐらいの激しさ。
2時間くらいも続いたのではないだろうか。
時刻は10時を過ぎている。
火は少しずつ小さくなり、バイニン族も奥の方に退場していった。
閉幕だ。
凄かった・・・!
帰りのバスの中で、おじさんがこのファイアーダンスは平和を願うものなんだよ、と教えてくれた。
帰りのバスの中は、他の乗客は疲れたのかみんな爆睡していた。
私は興奮が治まらなかった。
火の中に果敢に入っていくあの精霊達は、力試しでもしているのか、災いを消そうとしているのか、火のパワーに敬意をしめしているのか・・・私には真意のほどはわからないが、まるで不思議の国のアリスのように、不思議な世界に迷いこんでしまったような感覚だった。
本当に見られて良かった!
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