絶景舞踏

旅記事337 トドラ渓谷と、ハマムという名の男の園


この記事は、2017年4月21日の出来事です。

ティネリールのホテルMaison d’Hôtes Retour Au Calmeは朝食がついていました。

Maison d’Hôtes Retour Au Calme朝食
Maison d’Hôtes Retour Au Calmeの朝食

炭水化物と、薄く伸ばした炭水化物にバターやジャム、チーズを載せて食べるオーソドックススタイル。コーヒーとジュースもついています。これも結構量多めです。

ちなみに昨晩食べた夕食は有料で付けてくれるというもので、ひとり75ディルハム(825円くらい)かかっています。モロッコにしては高めですが、味よし量多めという恵まれたものだったので、この日も奮発して夕食の注文をしました。ユーキさんもいるし、またみんなで食べよう。

そして、ユーキさんがハマムに行ってみたいというので、ホテルの人にハマムの事を訊いてみました。

ちなみにハマムとは、イスラム圏における公衆浴場のことです。あとで詳しく書くのでそれ以上の説明は割愛。

宿の人によると、近くに旅行者があまり訪れないハマムがあり、ひとり100ディルハムでフルコースでやってくれるところがあるそうです(なにをやってくれるんだ?という疑問はさておき)。おじさんが送迎もしてくれるそうで、頼むかどうかを後で回答することにして、ひとまず我々は3人でトドラ渓谷に行ってみることにしました。

トドラ渓谷は、ティネリール観光の目玉です。多くの外国人が観光にやってきますし、渓谷付近には日本人宿もあります。

ホテルの犬

ホテルの犬。我々が玄関のチャイムを鳴らして外から入るとすごい勢いで駆け寄ってきますが、我々の姿を視認するや否や興味を失い立ち去っていく可愛いヤツです。

トドラ渓谷までは、近くのバスターミナルから乗り合いのグランタクシーに乗っていきます。グランタクシー乗り場はムハンマド5世通りとハッサン2世通りの間にある公園のエルラシディア側にあるようですが、宿の兄ちゃんが親切にも乗り場まで一緒に来て案内してくれました。

近くのバスターミナル

我々が行った時には一台も停まっておらず、その辺の人に訊くとトドラ渓谷行のタクシーは比較的早い時間に出てしまうらしく、もっと早く来るべきだったねということでした。といっても11時くらいでしたが。幸いにもまだタクシーは運行していたのでそれを待って向かうことに。

アラビックの標識

アラビア文字の標識。まったく読めません。

グランタクシーはひとり15ディルハムで連れて行ってくれました。30分以上乗るのでそれほど高いとは感じませんが、帰りのタクシーはひとり8ディルハムでした。

車窓から
車窓から

ときに、海外ではあるあるですが、タクシーに乗るときに「ひとりいくらで定額」という勘定の仕方にいつも疑問を抱きます。人数が多く乗れば乗るほど乗客としては混み合って乗り心地が悪くなるのに、ドライバーはより儲かるという、サービスの質と対価に矛盾が生じます。

「一台いくら定額」で、乗り合う人数で割るシステムになるのが通常だと思うんですが。その辺の料金設定もドライバーに一任されていて、決まりがないというのも海外あるあるです。

勿論一台いくらを採用しているドライバーが多い国もあるし、メーター制を取り入れているところもありますよ。

さて、タクシー乗り場から40分くらいだったか、トドラ渓谷の入口に到着しました。

トドラ渓谷入口
トドラ渓谷入口

このアングルだと分かりづらいのですが、相当に深い渓谷です。崖も切り立っており、ロッククライミングの地としても有名だそうです。そしてここはやはり観光地。お土産がたくさん並んでいます。ここのお土産は、布が多いですね。

お土産は布

布製品ではなく、布。手織りのようです。

ベルベルマーク
ベルベルマークの布

「自由」を意味するベルベルマークの布もありました。これを集めても学校の備品とかの購入は出来ません。

水は少なめ

渓谷には川が流れていますが、水量は少なめです。ちなみに対岸には日干し煉瓦で造られた建物が数軒あり、高級そうなレストランなどを経営していました。

ロバを連れたおじさん
ロバを連れたおじさん
階段落ちてる

階段落ちてる。ゴミは当然のように落ちていますが、水は割と澄んでいました。

ロバと、遠くに畑
ロバと、遠くに畑

遠くの方で住民がおーいと手を振っていたので何だろうと思ったら、「ノーフォトー!」気持ち解らなくもないけど、君らは撮ってないから。

トドラ渓谷の入口らしき看板が見当たらないので、なんとなく登れそうな所から登ってみることに。

住民が降りてくる
降りてくる住民

住民が降りてくるところに道があるようです。

干上がった川の跡

川が干上がった跡。その左に細い道が見えます。その道を登っていきます。

少し登って振り返る

少し登って振り返ると、渓谷の深さがよりよく分かります。

こんな道をひたすら

こんな道をひたすら登ります。ちなみにこの時は何故か体操について語っていました。遠くに見えているアスファルトの道路がグランタクシーを降りた道です。

棘のある植物に花
棘の植物に咲いた花

乾燥地帯によくある棘をもつ植物ですが、可愛らしい花が咲いていました。

袖が落ちてる

同じ種類の植物が、今度は誰かのシャツの袖をむしり取ったようです。

歩いていたら植物に袖が引っ掛かったので、袖を引きちぎって先を急いだと。そんなシチュエーションあるか?モロッコ人ならそうするの?

天然の階段
天然の階段

自然の造形、天然の階段。ただし段は低いです。

万琵もひた歩く

万琵もひた歩きます。道案内の看板がないので、どこまで行くのか、我々のさじ加減です。

バッタもいます
完全なる保護色のバッタ

植物があれば昆虫もいます。景色へのこの溶け込み具合は相当です。

もうひといき

15時近くになり、帰りを考慮して、あともうひといきってことにしましょう。

絶景が広がる
到着した場所

最後は少し手を使うくらいの急坂を登り、この景色が見渡せる場所を到達点としました。

万琵めいそう
万琵の瞑想

突き出た石の上で落ちたら痛いじゃ済まないようなちょっと危険な場所ですが、足元が見えず、宙に浮いた感覚になれる場所で瞑想する万琵。

トドラ渓谷脚前挙
脚前挙

この場所で倒立は流石に危なすぎるので、脚前挙にしておきました。

来た道を住民とすれ違ったりしながら戻ります。ここは岩石砂漠と言っても過言ではないくらい荒涼とした土地で、崖崩れも起きやすいので慎重に下りていきます。

住民とすれ違う

我々は下る道、住民は上る道です。さらに登った先には彼らの家があるのでしょう。そこがどんな集落になっているのか気になります。

渓谷の入口まで戻ると、ロッククライマーの集団がいました。

クライマー
写真の下部に見えているのは電線。

下にはクライマーの仲間が待機していました。下から見ていても怖いです。

帰りのグランタクシーをすぐに捕まえることが出来、ほっと安心。暗くなる前に帰れそうだ。帰り賃は行きの半額で済んだし。

モロッコはオレンジが安い
オレンジ生搾り屋

モロッコはオレンジがよく手に入るようで、こういうオレンジ生搾りジュース屋をよく見かけます。喉渇いたなぁ。

ホテルに戻り、ハマムの依頼をすることにしました。折角なので(何されるのか分かりませんが)フルコースを頼みます。

ちょっと高いのと女性一人だけなので、万琵は今回遠慮です。ユーキさんと僕の二人で行くことになりました。

持ち物はタオルと替えのパンツと110ディルハム。地元民向けのハマムらしいので、カメラや現金などの貴重品は絶対に持っていきません。余分な10ディルハムは送迎のおじさんへのチップです。したがってハマム関連の写真はありません。

ので、下書きなしの絵でお楽しみください。

着いてみると、入り口には看板のようなものは無く、入るとすぐに半裸のおっさん達がベンチに座っているのが見えました。コインロッカーは当然のように存在せず、着替えなどは受付のカウンター内で預かってもらえました。

ハマム内部
ハマム内部

先ず番台で100ディルハム支払います。おそらくホテルから連絡が行っているのでしょう、何も言わずにお金を受け取り、服を脱ぐよう指示されます。パンツは脱いじゃダメです。

ユーキさんがトイレに行ったので中を覗くと、一段上がった所にある横長のアルミだったか石だったかの壁に向けてみんなで並んで用を足す、いわゆる連れションスタイルでした。

着替えの入っている袋とたった今脱いだ服を番頭に預け(眼鏡も預けます)、魚加工工場の冷蔵室の入口のような厚手のビニールの暖簾で塞がれた部屋へと案内されます。

ハマム間取り
ハマムの間取り

案内してくれたのは番頭の横にいた細身でちょっと筋肉質なあんちゃん。彼がフルコースをやってくれるようです。案内されるまま①の部屋から②を通り、③の部屋へ通されました。

②の部屋から蒸気が満ち満ちており、蒸し暑い低温サウナくらいの温度でした。近視であることも相まってあまり中の様子をハッキリ見ることは出来ませんでしたが、各部屋あまり広くはなく、②、③の部屋が寝そべったり座ったりするスペースなので、それぞれ2~3人が同時利用するのが限界のようでした。

先ず③の部屋でうつ伏せになると、ぬるめのお湯を掛けてくれます。「どこから来たの~?」とか「初めてなの?」とか「僕は子供二人いるよ」など話しかけてきました。そして、あんちゃんが石鹸を手に付けると、そのまま手で僕の身体を洗い始めました。もちろん仰向けでも同様。うーむ、若干キモイ。

お湯で石鹸を流すと、次は②の部屋に移動します。ユーキさんが「あいつ絶対ゲイだ」と言っていました。たしかにちょっとそれっぽい話し方するけど、子供いるって言ってたしなぁなどと半信半疑でいました。

②の部屋ではヨガマットのような薄手のウレタンマットの上にうつ伏せに寝かされました。そしてあんちゃんが赤いミトンのような手袋をしてきました。

なるほど垢すりするのね~と呑気に待ち構えているとそのミトン、ザリザリザリ!めちゃくちゃ痛い!粗目の紙ヤスリか!グゥゥっと耐えているとあんちゃんが嬉しそうに垢をつまんで「スパゲッティだ♡」すいませんね、旅に出てから垢すりなんてしてないもんですから。

けっこう細かいところまでやってくれるので、皮膚の薄い部分、例えばくるぶしの腓骨あたりは血が滲んでました。

全身垢すりの後は軽く流してストレッチです。ストレッチというか、関節技です。うつ伏せのままパロスペシャル極められたかと思えばそのまま後ろに引っ張られてロメロスペシャルに移行する、あんちゃん相当の業師でした。

痛みに耐えながら時が過ぎるのを待つ僕を見て「キリストみたいになってたよ」ユーキさんが言ってました。

ようやく終わりかな、と思いきや、彼のオリジナル技が炸裂しました。

最終技
最終技

絵が下手なのでお分かりか定かではありませんが、足首を後ろ手で掴んで穴を描くようにされ、その穴の中をヌルヌルのあんちゃんがグルグル回るという大技でした。あまりの回転の勢いに耐えきれず足首を手放してしまうとチッと苦い顔をしてあんちゃんが再び足首を持たせ、またグルグルと回りだしました。

一通り満足すると彼は穴から出てきてふっと息をつき、番台の方へ消えていきました。

最後のはストレッチになってないと思うんだが・・・彼なりの何かしらのメタファーだったのか・・やはり彼はゲイだったのか・・?

あんちゃんは冷たいペットボトルの水を持ってきてくれました。美味い、気が利くなぁ。フルコースに込みなのかな?

その後は頭をシャンプーし、4回ほどお湯と水で身体を流してくれました。ちなみにユーキさんはストレッチを拒んでいました。ずるいっ!

①の部屋は他の部屋と異なり涼しいので、休憩したり汗が引くまで待機するのに適しています。

予め伝えておいた終了時間に外に出るとドライバーのおじさんが待っていてくれました。湯冷めせずに済みました。

ホテルに帰ってきて、頼んでおいた晩御飯です。

晩ごはん

今晩はクスクス。美味い!

面白かったけど、疲れました(笑)


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この時滞在していた宿はコチラ⇒Maison d’Hôtes Retour Au Calme