絶景舞踏

旅記事15 ミューラーハット


sealy tarnsまで地獄の階段を上ってきた私達は、ここで引き返すか、さらに上のミューラーハットまで行くか悩んだ。
sealy tarnsからミューラーハットまで片道1時間30分。往復3時間かかる。sealy tarnsを下山するのにも、1時間30分。さらに宿泊所まで40分ほど。
時刻はもうすでに15時30分をまわっていた。
日没までに、ぎりぎりで帰って来られるだろうか。下山してしまえば、宿泊所までの道は暗くても何とかなりそうだった。

ムラケンは、雨も降っているし、もう下山しようと言ったが、私はどうしても上が気になった。
この場所でも素晴らしい景色が広がっているが、さらに上に登るとどんな景色が待っているのだろうかと気になってしょうがなかった。
ただ、山道は、sealy tarnsの整備された永遠階段とは違い、明らかに険しそうだった。
ガイドブックにも、かなりの健脚向きと書いてあった。うだうだと迷っていると、上から降りてきたばかりの、ウルグアイから来たという夫婦が声をかけてきた。
夫婦は自転車でいろんな国を周っているらしい。日本にも行ったことがあるらしく、素晴らしかった!と言っていた。
夫婦に上に行かないのか?と聞かれて、どうしようか迷っていると言うと、絶対行った方が良いという。贅沢な氷河を見ることが出来ると強く勧められた。

それでも、うだうだしている私たち。

ゆっくり登れば大丈夫だ!
人生一度きりよ!!

溌剌とした夫婦は明るくそう言って、親鹿のように軽快に下山していった。

とりあえず、持参したクッキーをもしゃもしゃ食べた。

気づいたら、もう登ってくる人も上から降りてくる人もいなくなっていた。
時間的に、多くの人は、もう下まで降りているのだろう。

心細くなり、後ろ髪ひかれながらも、ムラケンとやっぱり下山した方が良いねと下ろうと決めた時、白人のおばさん二人組がわき目もふらず上に登ってきた。
物凄く元気で、私たちにとっては長袖でも寒いところを、タンクトップ、短パンで、しかもサンダルで、べらべら喋りながら。
私たちは決心した。
よしっ、上に行こう!

 

山道は想像したとおり、険しくなり、ごつごつと岩がむき出しになっていて、手を使ってよじ登らなければならない場所も多かった。アスレチック感覚だ。
ただ不思議と永遠階段より楽しくて、体力的にはきついはずなのに、登れば登るほど元気になった。
たぶんなにかの脳内物質が出ていたのだろう。

私たちは時間との戦いでもあったので、一心不乱で登った。

上がれば上がるほど寒くなり、風が強くなった。

 

ミューラーハットからのケアポイント

 

ミューラーハッ途中からの俯瞰

 

時折後ろを振り向くと、さっきまで居たsealy tarnsやvillegeがはるか下に見えた。
きづいたらおばさんたちも追い越していた。

時間的にあともうちょっとで頂上かなというとき、急に視界が広がる部分があった。

 

新鮮な氷河

 

土を被った氷河

 

ハッとするような景色だった。
風の音と、時折、氷河が崩れる雷のような音が響く。
目の前には悠然と座る氷河の大パノラマ。
感動した。
心から、登ってきて良かったと思った。
人生でも、頑張れば見えなかったものが見えるというけれど、きっとこういうことなんだろうなと思った。

 

ミューラーハッ倒立

 

ムラケン、ミューラーハッ倒立。

しかし、私たちには、そんな感傷に浸っている時間はなかった。
空は刻一刻と暗くなってきていた。
急げ!

 

奥へと伸びる氷河連山

 

ここからの道は崖になっていたり、大きな岩が多くなったりして、足を滑らせないように気を張る場所が多くなった。

 

ミューラーハット

 

20分後ほど、ハットが見えた!

着いた~!!

山小屋には数人の人がいて、どうやらここは宿泊可能らしい。
私たちに登る決心をさせてくれたおばさんも宿泊者だったみたい。宿泊は予約制らしい。

そりゃあんな時間から登る人もいないよな。

 

ミューラーハットイレ

 

ムラケンが、ハットの横にあるトイレに寄った時、開けたら女性が入っていて、すごく焦っていたのが、面白かった。
なぜかそのトイレは中からも外からも鍵が開けられる仕組みになっている。

 

時刻は20時過ぎ、無事下山できた。
急ピッチの下りに、私もムラケンも膝が笑った。
取り敢えずほっとした。
辺りはもう暗く、宿泊所までの道はヘッドライトを着けて歩いた。
昼間には見られなかった野兎がたくさんいて可愛かった。

ふ~お腹すいた!


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