夕方から寝られるはずもなく、寝たり起きたりを繰り返しているうちに起床時間の12時になってしまった。
途中ムラケンはお腹が痛くなって、寝床から起きていったが、どうやらもう大丈夫そうで安心した。
ガイドのおじさんが部屋の窓から空を確認して、ちょっと曇っているけど星が出ている、と言った。
天気予報では雨だったから、ほっとした。
お腹はたいして空いていないが、同室のガイドさんとともに、夜中の1時の軽食を胃に流し込んで無理矢理体を起こした。この時もビュッフェ形式になっていて、メニューはかなり豊富。
軽食を食べながら、ガイドさんと少し雑談。
エベレストには登らないの?と聞くと、登りたいけど、登るためにはまずたばこをやめなきゃなあ、と言っていた。
エベレスト、死ぬ前に登ってみたいなぁ。
それから、土が乾いていると土ほこりがすごいから、マスクがあった方が良いよ、と教えてくれた。
興奮のせいか眠気はないが、体はまだ少し疲れが残っていた。
ガイドさんに頂上でまた会おう、と挨拶を交わして分かれた。
ガイドさんは総勢10人くらいのお揃いの黄色いジャンパーを着た集団を引き連れて出発していった。
私たちもノルウェーのカップルとエルと集合して、いざ出発。時刻は夜中の2時15分。
頂上までは4時間ほど登らなければならない。
4時間・・・・。
外にでると、当たり前だが真っ暗で冷たい空気が肌をなでた。
かなり着込んでいるが、動いていないと寒い。
上をみると、もうすでに出発している集団のライトが光って、山道を照らし、光りの道を作っていた。
少し早めに出発したせいか渋滞は起きていない。
今度もカップルに先にいってもらい、私たちはゆっくり登り始めた。
ヘッドライトの光の道ができているものの、周りは真っ暗だ。
空を仰ぎ見ると東京では見ることが出来ない数え切れない星が瞬いていた。眼下には町の明かりも見える。
残念にも星の写真は私たちの性能のカメラではとらえることが出来ず、お届けすることが出来ない。
きれいで何度もなんども空を見ていたら、こけそうになった。
危ない危ない。
ラバンラタからの道は始めは階段になっていたが、すぐに岩の道に変わった。傾斜がきつくて、手を使ってよじ登らなければいけない箇所が増えた。
暗くて道がわかりにくく、道という道がなく、時折ロープが道しるべ代わりになっていて、縄を使ってよじ登っていく。
エルがこっちだよ、と手を貸してくれた。
ガイドの本領発揮か。
7.0キロ地点。3653M
サヤッサヤチェックポイントに到着。
ここが最後のトイレになるよ、と言われてムラケンが使いに行こうとしたが、水が出ないらしく断念。
トイレの後からの道は登りはなだらかになったが、ますます空気が薄くなりきつくなった。
ここはキナバル山で有名なポイント。暗くて真顔のムラケンしか映っていないが。手の傾斜と山の傾斜はたぶん平行している。
木はいっさいなく、周りを見渡せる。
むき出しの岩肌を登っていく。
空気はシーンとして、静かで透き通っている。
大きく息を吸うと、肺いっぱいに澄んだ空気が入り込んできた。
気持ちがよい。
きれいだ。
空はさっきにも増してきらきらと星が輝いている。ニュージーランドのテカポでは空が曇っていて星空が見えなかったけれど、ここで満点の星空を見ることが出来て良かった!
空が近く感じる。
まるで宇宙を歩いているかのようで、地球じゃない、どこか違う惑星に来た気分になった。
アポロ13の映画を思い出した。初めて月に降りた時、こんな感じだったのかな、と妄想した。
空気がどんどん薄くなってきて、息があがるのが早くなった。
一歩一歩がさらにゆっくりになってしまい、
足を運んでも運んでも、進んでないような気さえした。
きつい。
山登りは人生というものに例えられるが、本当にそうだと思う。
早くつかないかなあ~
段々私は、気持ち悪くなるのを感じた。意識して呼吸を大きくした。
高山病の初期症状か、ただの寝不足からかわからないけれど、気持ち悪くないふりを自分にしたが効果なし。
後ろのムラケンも少ししんどそうだ。
エルといえば・・・超余裕そう!笑
なんなの、この違いは!!と可笑しくなるほどで人間の体力の違いを目の当たりにして、愕然とした。
体力上げなければ。
8.0キロメートル地点。3929M
途中座り込んで登れなくなっている人を見かけた。
ガイドに手を引かれるも、どうしても登ることが出来なくなってしまったようだ。
ひたすら登ること4時間。
登れば必ず頂上に行き着くもので、頂上に人が集まっているのが下から見えだした。
頂上じゃない?!
ムラケンと歓声の声をあげた。
わたしはこの時気持ち悪さが増していて、これ以上頂上が遠かったらピンチだなと思っていたところだった。酸素のスプレー缶、やっぱり持って来ればよかったかな。
と思ったけれど、
到着だ!
ムラケン共に登りつくことが出来た。まだ真っ暗で周りの景色は、闇!
ふ~。達成感と安堵が交差する。いや~きつかった!
日の出まで頂上で座って待つことに。
座って頂上の空気の薄さに体が段々順応したのか、少しずつ気持ち悪さは消えていってくれた。
何度も何度も深呼吸した。とにかく気持ちよかった。気温は思ったよりも寒くなかったが、黙って座っているとやっぱり冷える。
少し曇っているが、素晴らしい景色だ。
反対側には、麓から見えていたであろう頂上の岩が目の前にあった。
温かい。
なんとも言えない光のグラデーション。
下の町も少しずつ見えだす。
昨日下から見あげていた頂上にいるなんて夢みたいだ。
顔むくんでてすみません。
結婚記念日。
すばらしい贈り物をキナバル山は届けてくれた。
二人で無事登れて良かったね。
キナバル山、ありがとう!!
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この時滞在していた宿はコチラ⇒ラバンラタゲストハウス(HPはありません。ステラサンクチュアリロッジが宿泊を管理しています)
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私たちが使っているカメラです。そんなに大きくなく、初心者むけのカメラだと思われますが、綺麗な写真がとれます。
星空を取るにはもっと感度の良いカメラじゃないと取れませんが、私たちには十分です。
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